火星

火星:赤い惑星の科学的探求と未来への展望



1. はじめに:赤い惑星、火星


火星は太陽系において太陽から4番目の惑星であり、その特徴的な赤色は古くから人類の想像力を掻き立ててきました 1。ローマ神話の戦いの神マルスにちなんで名付けられ、その血のような色は多くの文化で同様の連想を生んできました 1。地球に最も近い惑星の一つである火星は、かつて生命が存在した可能性や、将来の有人探査、さらには人類が移住する可能性を秘めていることから、科学的探求の最前線に位置しています 3

火星は地球型惑星に分類され、地球と多くの共通点を持つ一方で、その環境は極めて異なります。地球の約半分の大きさでありながら、表面にはクレーター、巨大な火山、壮大な峡谷など多様な地形が見られます 1。また、地球と同様に自転軸の傾きにより四季が存在しますが、その大気は非常に薄く、主に二酸化炭素で構成されています 1。これらの特性は、火星が地球とは異なる進化の道を辿ってきたことを示唆しており、その理解は惑星科学における重要な課題となっています。


2. 火星の物理的特性と軌道


火星の物理的特性は、地球と比較することでその独自性がより明確になります。火星は地球の約半分の直径(約6,794 km)を持ち、体積は地球の約15%に過ぎません 1。質量も地球の約11%と小さく、その結果、表面重力は地球の約38%(3.711 m/s²)に留まります 1。火星の「赤い惑星」という通称は、土壌に含まれる酸化鉄(錆)に由来しますが、表面の色は実際には茶色、金色、黄褐色、緑色など多様な鉱物の存在によって変化します 1

火星の1日(ソル)は約24.6時間であり、地球の1日と非常に似ています 1。しかし、火星の1年(公転周期)は687地球日(約1.88地球年)と長く、これは地球よりも太陽から遠い軌道によるものです 1。火星の自転軸の傾きは25.19度であり、地球の23.4度と非常に似ているため、地球と同様に明確な四季が存在します 2。しかし、火星の軌道が楕円形であるため、季節の長さは均等ではありません。例えば、北半球の春は最も長く194ソル、秋は最も短い142ソルとなります 2

火星は地球と同様に、密度の高い金属質の核、その上を覆う岩石質の層であるマントル、そして最外層の地殻からなる分化した構造を持っています 2。核は鉄、ニッケル、硫黄で構成され、半径は約1,500〜2,100 kmと推定されています。現在の科学的見解では、核は完全に溶融した状態であり、固体の内核は存在しないと考えられています 6。地殻の厚さは平均で約42〜56 kmですが、場所によっては6 kmから117 kmまで変化します 2。2019年にはNASAのインサイト探査機が450回以上の「火星地震(Marsquakes)」を検出し、火星が地震活動を持つ惑星であることが確認されました 1。インサイト探査機による内部構造の研究は、火星のマントルが約250kmの深さまで剛体であることや、地球の下部マントルに相当する熱絶縁層がないこと、そしてマントルの底部に約150〜180kmの液体のケイ酸塩層が存在する可能性を示唆しています 8

火星の季節変動は、単に気温の変化だけでなく、極冠の二酸化炭素氷の昇華と凝結を通じて、大気全体の質量と気圧に大きな影響を与えます。この変動は最大で±8%にも及びます 13。地球では季節変動が主に水循環と気温変化に影響しますが、火星では大気の主成分である二酸化炭素が極冠で固化・昇華するため、大気そのものの量が季節によって大きく変動します。この変動は、惑星全体の気圧、風、そして水蒸気やダストの輸送に直接影響を与え、気候システム全体が密接に連動していることを示唆しています。これは、地球の気候システムとは根本的に異なる、火星独自のダイナミクスを理解する上で極めて重要な側面です。

火星の地球の約38%という低い表面重力は、その大気が薄い主要な原因の一つと考えられています 1。惑星の重力が弱いと、大気中の軽い分子、特に水素が宇宙空間へ逃げやすくなります。火星の弱い重力と、地球のような全球的な磁場がないこと 12 が相まって、太陽風による大気侵食に対して脆弱となり、過去に厚かった大気が現在のように薄くなったと考えられます。これは、惑星の基本的な物理特性が長期的な気候進化に与える決定的な影響を示す明確な因果関係です。

インサイトによる火星地震の検出は、火星の内部が「死んだ惑星」ではなく、地質学的に活動していることを示しています 1。地震活動は惑星内部の熱と構造に関する貴重な情報を提供します。火星地震の観測は、核の大きさや状態、マントルの組成、地殻の厚さなど、これまで推測に過ぎなかった火星の深部構造を直接的に解明する手がかりとなります。これは、火星の形成と進化の歴史を理解し、地球型惑星の多様性を比較研究する上で不可欠なデータです。


火星と地球の主要物理特性比較表


項目

火星

地球

直径

約6,794 km 6

約12,742 km

質量

地球の約0.107倍 11

5.97×10^24 kg 11

体積

地球の約0.151倍 11

1.08321×10^12 km^3 11

密度

3.93 g/cm^3 9

5.51 g/cm^3 9

表面重力

地球の約0.38倍 (3.711 m/s^2) 1

9.807 m/s^2

平均太陽距離

2億2,800万 km (1.52 AU) 2

1億4,960万 km (1 AU) 11

公転周期(年)

687地球日 (1.88地球年) 1

365.25地球日

自転周期(日)

24.6時間 (1ソル) 1

23.9時間

自転軸傾斜角

25.19度 2

23.4度 2

平均表面温度

-55℃ (-133℃〜+27℃) 3

約15℃

大気主成分

二酸化炭素 (約95.3%) 1

窒素 (約78%)、酸素 (約21%)

大気圧(地表)

6.35 mbar (地球の100分の1以下) 7

1013 mbar

月の数

2 1

1

磁場

なし (過去に存在の痕跡) 10

あり (全球磁場)

この表は、火星と地球の物理的特性を直接比較することで、両惑星の類似点と相違点を一目で理解できるようにします。これにより、火星がなぜ「赤い惑星」と呼ばれるのか、なぜ大気が薄いのか、なぜ四季があるのかといった基本的な疑問に対する背景情報が明確になります。特に、重力や大気圧の差は、生命の可能性や有人探査の課題を議論する上で基礎となる重要なデータです。


3. 大気、気候、気象現象


火星の大気は地球の約100倍以上薄く、その気圧は地表でわずか6.35ミリバール(地球の海面気圧の100分の1以下)と極めて希薄です 3。組成は主に二酸化炭素(95.32%)で、その他に窒素(2.7%)、アルゴン(1.6%)、微量の酸素(0.13%)や水蒸気を含みます 1。この組成のため、人間は火星の空気を直接吸うことはできません 1

火星では、地球と同様に雲や風が存在し、大規模な砂嵐が頻繁に発生します 1。これらの砂嵐は、小さな竜巻のようなものから、惑星全体を覆うほど巨大なものまであります 1。砂嵐は、地表のダスト粒子が太陽光を吸収して大気を加熱し、温められた空気が冷たい地域へ流れることで強風を生み出し、さらに多くのダストを巻き上げるという自己増幅的なメカニズムで成長します 13。2019年1月に発生した小規模な砂嵐の観測では、NASAのMRO、MAVEN、ESAのTGOの3機が連携して、砂嵐が大気を加熱し、氷雲を消失させ、水蒸気を大気上層に輸送する様子を初めて捉えました。これにより、水素の散逸が通常の5〜10倍に増大することが示されました 16

火星の極冠は、水氷と二酸化炭素氷で構成されており、季節に応じてその大きさが変化します 6。冬には大気中の二酸化炭素の最大3分の1が極冠に凝結し、春には昇華して大気に戻ります。この季節的な変化が、火星の大気全体の気圧やガス組成に影響を与えます 13。砂嵐は、火星の水蒸気に由来する水素を下層大気から上層大気へと運び、宇宙空間への流出を促進する役割を果たします 16。2016年9月の砂嵐の観測では、上層大気の水素が約20日間で約2倍に増加し、酸素が約6日間で約3分の1に減少したことが判明しました。これは、砂嵐が水素の流出を促進し、酸素の流出を抑制する関係にあることを示唆しています 17

科学者たちは、火星がかつて地球のような厚い大気を持ち、液体の水が表面に存在しうるほど温暖で湿潤な環境であったと考えています 1。しかし、火星の歴史のある時点で、その大気の大部分が宇宙空間に流出してしまいました 13。主要な見解は、火星の弱い重力と全球的な磁場の欠如が、太陽風による大気侵食に対して脆弱にしたというものです 13。NASAのMAVENミッションは、この大気流出過程を調査しています 13

砂嵐が水素の流出を促進し、酸素の流出を抑制するという発見 17 は、火星の大気が何億年にもわたって砂嵐の働きによって酸化され続けてきた可能性を示唆しています。もし古代の火星大気が還元的な環境、すなわち生命にとって有機物合成に適した環境であったとすれば、砂嵐による長期的な酸化プロセスは、火星の環境史、特に生命の可能性の進化に決定的な影響を与えた可能性があります。これは、現在の火星の乾燥・寒冷な環境が、単なる大気流出だけでなく、内部プロセスと気象現象の複雑な相互作用によって形成されたことを示唆しています。

小規模砂嵐による水の散逸過程をNASAとESAの3つの探査機が同時に捉えることに成功した事例 16 は、単一ミッションでは不可能な、惑星規模の複雑な現象の包括的な理解を可能にしました。異なる軌道や観測機器を持つ複数の探査機が協調して観測を行うことで、地表から宇宙空間までの大気層全体の動態を立体的に捉えることができます。これは、特定の現象(例:砂嵐)が惑星システム全体に与える影響を詳細に解明するために不可欠であり、将来の複雑な科学目標を達成するための国際協力のモデルケースとなります。


4. 表面地形と地質学的進化


火星の表面は、地球の砂漠に似た岩石質の地形であり、広範囲にわたって赤いダストに覆われています 1。マリナー4号が送り返した画像で、火星の表面が月のようにクレーターだらけであることが明らかになり、当初は「死んだ惑星」という印象を与えました 3。特に南半球はクレーターで覆われた高地が広がっています 18

火星には太陽系最大の火山であるオリンポス山(高さ約25km、直径約624km)や、タルシス地域に広がる巨大な火山帯が存在します 3。これらの盾状火山は、地球の火山よりもはるかに巨大です 6。また、マリネリス峡谷は、長さ約4,000km、最大幅600km、深さ7kmにも及ぶ壮大な峡谷系であり、太陽系最大の峡谷の一つです 5。他にも、暗い斜面筋、ダストデビル跡、砂丘、メデューサ・フォッサ地形、フレッテッド地形、層状構造、ガリー、氷河、扇状地、カオス地形、古代の河川跡、ペデスタルクレーター、ブレイン地形、リングモールドクレーターなど、多様な表面特徴が確認されています 5

火星の南北極には極冠が存在し、白い氷で覆われています 2。北極冠は水と二酸化炭素の氷からなり、南極冠は主に二酸化炭素の氷で構成されています 18。極冠の白い表面はごく薄い層に限られ、内部はダストと氷の混合物で構成されていると考えられています 18。極冠には渦巻き状の谷が刻まれており、これは氷とダストの混合比が変化した気候変動を反映している可能性があります 18

火星の過去の地質学的活動については、いくつかの見解が存在します。かつて火星にも地球のような大規模なプレートテクトニクスが存在したという有力な説があります。マーズ・グローバル・サーベイヤーが南半球で発見した地殻中の磁気の縞模様がその証拠とされています 12。この説によれば、マリネリス峡谷はプレートが裂けようとした結果形成された可能性があります 19。しかし、別の研究では、火星には地球のようなプレートテクトニクスの明確な証拠は見つかっておらず、オリンポス山のような巨大な火山が形成されたのはプレートが移動しなかったためと説明されています 18

火星の表面には、かつて液体の水が流れていたことを示す多くの証拠があります。河川盆地、運河、古代の海、水によって刻まれた谷、湖の痕跡などがそれにあたります 3。特に、マリネリス峡谷の北側には、地球の氷河融解による洪水跡に似た「洪水チャネル」や、地球の川の形状に似た「バレー・ネットワーク」が見られます 18。火星の多くの場所で岩石が層状に配置されているのが見られます。これは火山活動、風、水によって形成された可能性があります 20。地下水によって硬化された層も存在します 20。また、火星にのみ見られる特徴として、泥流噴出物(mud-flow-ejecta blankets)やカオス地形(chaos terrain)があります 5。泥流噴出物は、隕石衝突時に地表の氷が融解して泥となり流出したことを示唆しています 5。カオス地形は、広大な渓谷システムを形成しており、浸食されたメサからの砂がフロアを覆っている様子が見られます 20

火星の過去のプレートテクトニクスについては、磁場分布の縞模様 19 と、オリンポス山のような巨大火山 18 の存在が矛盾する証拠として提示されています。地球ではプレートテクトニクスが火山活動を分散させ、巨大な単一火山が形成されにくいですが、火星のオリンポス山は地球の100倍以上の体積を持つとされます 6。これはプレートが固定されていたことを示唆します 18。しかし、マーズ・グローバル・サーベイヤーが発見した磁気の縞模様は、地球の海嶺でプレートが形成される際に磁場が逆転する現象と類似しており、過去のプレートテクトニクスを示唆します 19。この矛盾は、火星の地質学的進化が地球とは異なる、あるいはより複雑なメカニズム、例えば初期の短期間のプレートテクトニクス活動や、地球とは異なる形態の地殻運動を辿った可能性を示唆しており、惑星進化モデルにおける重要な未解明の課題です。

火星に広範な流水地形(河川、デルタなど)があるにもかかわらず、現在の古気候モデルでは、降雨を伴う温暖な気候を許容する条件やメカニズムが見つかっていません 18。液体の水が広範囲に流れるには、厚い大気と温暖な気候が必要です。しかし、現在の火星の大気は非常に薄く、液体の水はすぐに蒸発するか凍結します 13。この地形的証拠と気候モデルの間のギャップは、火星の初期の気候が現在理解されているよりもはるかに複雑であったか、あるいは水の存在形態や流動メカニズム、例えば地下からの間欠的な湧出や氷河の下での流れについて、まだ解明されていない側面があることを示唆しています。これは、火星の過去の環境史を再構築する上で重要な研究課題です。

隕石衝突によって形成されたクレーター周辺の「おどろおどろしい」(oozy)ブランケットやローブ状のパターンは、衝突時に地表の氷が融解して泥流が生じたことを強く示唆しています 5。この特徴は、過去に火星の地表近くに広範な氷が存在した直接的な証拠となります。これは、火星が単なる乾燥した砂漠ではなく、地下に大量の水を保持していた可能性を裏付け、その水の歴史と分布を理解する上で重要な手がかりとなります。


5. 火星における水の歴史と現状


火星はかつて海が存在し、地球と似た温暖で湿潤な環境であったと考えられています 3。Mars Express (ESA) や Mars Reconnaissance Orbiter (NASA) などの探査機による可視・赤外分光観測により、約30億年より古い地質体を中心に、多くの流水地形(三角州など)や多種類の含水粘土鉱物が広範囲にわたって発見されました 1。NASAのスピリット・オポチュニティ・ローバーは、水中でしか形成されない鉱物(ヘマタイトの「ブルーベリー」、石膏の脈、熱水泉で形成されるシリカなど)を発見し、かつて液体の水が長期的に存在した強力な証拠を見つけました 1。キュリオシティ・ローバーはゲール・クレーターで古代の淡水湖の地質学的痕跡を発見し、微生物生命にとって好ましい環境であった可能性を示唆しています 21。パーサヴィアランス・ローバーは、イエゼロ・クレーターで古代の湖環境と、水との相互作用の複雑な歴史の証拠を発見しました 28

現在の火星表面には液体の水はほとんど存在しませんが、大量の氷が地表や地下に存在します 6。極冠には永久的な水氷のキャップが残り、南極冠には二酸化炭素氷の下に豊富な水氷が存在します 18。500万km³以上の氷が火星の地表または地表近くで検出されており、これは惑星全体を35mの深さで覆う量に相当します 21。ユートピア平原の地下にはスペリオル湖に匹敵する量の地下氷が発見されています 21

特に注目すべきは、ESAのMars Expressに搭載されたMARSISレーダーのデータにより、火星の赤道付近にあるメデューサ・フォッサ地形の地下に、最大3.5kmの厚さを持つ巨大な氷の層が発見されたことです 22。この氷が完全に溶けた場合、火星全体を1.5〜2.7メートルの深さで覆うことができる量に相当し、地球の紅海とほぼ同量です 22。これは極地以外で発見された最大の水資源となります 22。また、2018年にはレーダーデータが氷河下の湖の存在を示唆し、2024年にはインサイト探査機の地震計データが地殻下10〜20kmの深さに液体の水の貯蔵層が存在する可能性を示唆しました 21。少量の一時的な液体の水が地表に存在する可能性や、季節的な塩水が斜面を流れる現象(再帰的斜面線)が示唆されていますが、これらは流れる砂やダストである可能性も指摘されています 21

火星の水の歴史は、かつての温暖湿潤な環境から現在の乾燥・寒冷な環境への劇的な変化を示しており、この変化が生命の生存可能性を地表から地下へとシフトさせた可能性を強く示唆しています 3。過去の広範な液体の水の証拠(河川地形、含水粘土鉱物、湖の堆積物)は、火星がかつて生命に適した環境であったことを示しています。しかし、大気散逸により地表の液体の水が失われた後、生命が存続するためには地下環境への適応が必要となります。地下氷や地下水の発見は、現在の火星においても生命が存在しうる「ホットスポット」を提供する可能性があり、探査の焦点が地表から地下へと移る論理的な理由を形成しています。

赤道付近のメデューサ・フォッサ地形における「紅海級」の巨大水資源の発見は、将来の有人火星探査および居住計画にとって「宇宙版ゴールドラッシュ」とも呼ばれるほどのゲームチェンジャーとなる可能性を秘めています 22。従来の火星の主要な水資源は極地の氷であり、その過酷な環境は有人探査の着陸地点としては不向きでした。しかし、赤道付近での大量の氷の発見は、太陽光発電の利用が容易で、より安定した温度環境を持つ低緯度地域での基地建設の可能性を高めます。水は飲料水だけでなく、ロケット燃料(水素と酸素に分解)や呼吸用酸素の生成(ISRU)にも不可欠であり、地球からの物資輸送コストを大幅に削減し、長期的な火星居住を実現するための鍵となります。この発見は、科学的探求だけでなく、実用的な資源利用の観点から火星探査の戦略を根本的に変える可能性を秘めています。

火星隕石中の水素同位体比(D/H比)の分析は、火星が誕生後4億年間で初期水量の半分以上を宇宙空間に流出したことを示しており、地形学的な推定では得られない約40億年前以前の水の歴史を解読する画期的な方法です 23。水素の重い同位体である重水素(D)は、軽い軽水素(H)よりも宇宙空間へ散逸しにくいため、惑星が水を失う過程で残された水のD/H比は増加します。火星隕石の分析により、火星のD/H比が地球海水の1.3倍から6倍に大幅に上昇したことが示されており 23、これは過去の大規模な水と大気の散逸の結果と解釈されます。この地球化学的アプローチは、地形データだけでは得られない、火星の水の総量とその時間的変化を定量的に理解する上で非常に強力なツールであり、火星の環境史の全体像を補完します。


火星における水の存在形態と発見ミッション


水の形態

主な存在場所

発見された証拠

主要な発見ミッション

液体の水(過去)

河川地形、湖底堆積物、含水粘土鉱物、水中で形成された鉱物

三角州、流水地形、含水粘土鉱物、ヘマタイト「ブルーベリー」、石膏脈、シリカ、古代淡水湖の地質学的痕跡

Mars Reconnaissance Orbiter (MRO), Mars Express, Spirit, Opportunity, Curiosity, Perseverance 1

水氷(地表)

極冠、クレーター底、急斜面

白い氷の覆い、渦巻き状の谷、露出した氷

MRO, Phoenix 18

水氷(地下)

永久凍土、メデューサ・フォッサ地形、ユートピア平原

レーダーサウンダーによる地下構造探査、メデューサ・フォッサ地形の巨大氷層、ユートピア平原の地下氷

Mars Odyssey, Mars Express (MARSIS), InSight 21

水蒸気(大気)

大気中

分光観測による化学的シグネチャー、砂嵐による上層への輸送

地上望遠鏡, MAVEN, TGO 16

液体の水(現在、一時的)

再帰的斜面線(議論中)

暗い筋状の地形(流れる砂やダストの可能性も指摘)

MRO 21

この表は、火星における水の多様な存在形態と、それぞれを発見した主要なミッションを一覧で示すことで、火星の水の歴史と現状に関する科学的理解の進展を視覚的に提示します。これにより、水の探求が火星探査の中心的なテーマであり続けていることが強調され、将来の生命探査や有人探査の基盤となる情報が整理されます。


6. 生命の可能性の探求


地球上では全ての生命が水なしでは生存できないため、火星で生命が進化していたとすれば、それは長期的な水の供給があった場所である可能性が高いです 1。科学者たちは、液体の水がかつて安定して存在した場所、現在も地下に存在する可能性のある場所、または熱水プールのような「ホットスポット」に生命の痕跡を探しています 14。キュリオシティ・ローバーは、ゲール・クレーターで過去に微生物生命を支えうる環境(古代の淡水湖環境、炭酸塩鉱物を含む岩石)が存在した化学的・鉱物学的証拠を発見しました 21。特に、衛星スキャンでは隠されていた炭酸塩(シデライト)の豊富な存在が、火星に炭素循環があった可能性を示唆しました 27。スピリット・ローバーは、熱水泉や熱い蒸気噴出孔に通常存在する高純度シリカを発見し、かつて熱水環境が存在した可能性を示唆しました。このような環境は地球の微生物生命にとって好ましい場所です 24。パーサヴィアランス・ローバーは、イエゼロ・クレーターで古代の湖環境の証拠と、微生物生命にとって居住可能であった環境の証拠を発見し、生命の兆候を保存するのに理想的な岩石を採取しています 28

生命の兆候(バイオシグネチャー)を非生命から区別することは大きな課題です。地球の生命とは異なる化学的・構造的特徴を持つ可能性も考慮し、NASAは地球中心ではない生命検出技術の開発を進めています 14。炭素は生命の基本的な構成要素であり、火星における炭素の場所と形態を特定することは、生命がどこで発達したかを理解する上で重要です 14。東京大学とNASAの研究チームは、火星の岩石に似た古代の地球の岩石から生命を検出する新しい技術「O-PTIR分光法」を開発し、顕微鏡レベルの精度で微生物細胞を特定できることを示しました 32。これは将来の火星サンプルリターンミッションにおける生命検出に有望な方法です 32

惑星保護方針は、地球の微生物で他の天体を汚染しないこと(フォワード汚染の防止)と、他の天体の生命で地球を汚染しないこと(バックワード汚染の防止)の二つの目的を持っています 33。火星は生命が存在する可能性が高く、地球微生物が増殖する可能性があるため、「保護すべき天体」として厳しい基準(カテゴリーIIIまたはIV)が適用されます 33。JAXAは、MMX(火星衛星探査計画)において、火星衛星の微生物汚染分布確率を定量化し、採取するサンプルの微生物汚染確率が十分に小さいことを証明することで、「制約なしの帰還」を可能にしました 33。これは、火星本星からのサンプルリターンが「制約付き」とされる中で、画期的な成果です 33

火星は隕石試料が存在する唯一の惑星であり、その分析はリモートセンシングでは得られない高精度の地球化学的情報を提供します 23。火星隕石中に含まれる衝撃ガラスの分析から、火星表層水成分が、マントル由来の初生水とも大気中の水蒸気とも異なる中間的な水素同位体比を持つことが明らかになりました。これは約40億年前の表層水の水素同位体比を反映していると考えられ、当時の水循環により形成された含水層が現在も地下に存在している可能性を示唆しています 23。JAXAのMMX計画では、フォボス表面に火星由来の砂が降り積もっている可能性が示されており、もし火星に生命が存在したならば、その死骸がフォボスに堆積している可能性も示唆されています。これにより、MMXは地球外生命の痕跡を発見できる可能性を秘めた計画として注目されています 34

バイキング計画が地表で生命の明確な証拠を見つけられなかった 35 後、火星探査の生命探査戦略は「水を探す (follow the water)」から「生命に適した環境を探す (seek signs of past life in habitable environments)」へと進化し、さらに「地下生命の可能性 (subsurface life)」へと焦点が移っています 1。バイキングの直接的な生命検出実験が陰性であったことは、火星の地表環境が現在の生命には過酷であることを示唆しました。しかし、その後のミッションで発見された過去の液体の水の広範な証拠(湖、河川、熱水泉の痕跡)は、火星がかつて生命に適した環境であった可能性を強く示しました。さらに、現在の地表が紫外線や宇宙線に晒される一方で、地下には水氷や液体の水が存在し、放射線から保護される環境があることから、生命の探査は地表から地下へと、より保護された環境へとシフトしています。これは、科学的理解の深化と技術の進歩が、探査戦略を継続的に洗練させていることを示しています。

JAXAのMMX計画が火星衛星フォボスからサンプルを採取することで、火星本星の生命の痕跡を探るというアプローチ 34 は、火星本星からのサンプルリターンに伴う厳格な惑星保護プロトコル(カテゴリーV)を回避しつつ、重要な科学的目標を達成しようとする戦略的な動きです 33。火星本星からのサンプルリターンは、地球を未知の微生物で汚染する「バックワード汚染」のリスクから、COSPARによって「制約付き」とされており、BSL4レベルの厳重な隔離施設での分析が義務付けられています 33。しかし、フォボスに火星由来の物質が降り積もっているというシミュレーション結果 34 を利用することで、MMXは火星本星に直接着陸せずとも、火星の生命の痕跡(もしあれば)を地球に持ち帰る可能性を秘めています。このアプローチは、火星本星からのサンプルリターンの複雑性とコスト、惑星保護の課題を考慮した上で、科学的目標を達成するための革新的な解決策であり、日本の宇宙探査の戦略的思考を示しています。


7. 火星の衛星:フォボスとダイモス


火星にはフォボスとダイモスの2つの小さな衛星があります 1。これらはジャガイモのような不規則な形をしており、重力が小さすぎるため球形ではありません 2。フォボスは火星に非常に近く、火星の表面から見ると地球の満月の3分の1から半分程度の大きさに見えます 36。火星の周りを1日に3回(約7時間39分)公転し、火星の自転よりも速く公転するため、西から東へ昇り、1回の出現で満ち欠けが目立ちます 15。ダイモスはフォボスよりも小さく、火星から遠い軌道(約23,458km)を約30時間で公転します 9。火星の表面からは、金星の最大サイズの約2倍の大きさに見えますが、肉眼では丸く見えます 36

フォボスとダイモスの起源は未だ議論の的です 15。最も有力な仮説の一つは、両衛星が炭素質C型小惑星と多くの共通点を持つことから、メインベルトから捕獲された小惑星であるというものです 12。別の仮説としては、火星への巨大衝突後に合体した破片である可能性も挙げられています 39。JAXAのMMXミッションは、火星の衛星の起源と、火星圏の進化プロセスを解明することを主要な科学目標としています 39

フォボスは火星に非常に近いため、火星の潮汐力の影響を強く受けています。フォボスは火星に年間1.8メートルずつ接近しており、約5000万年後には火星に衝突するか、潮汐力によって砕かれて火星のリングを形成すると予測されています 15。ダイモスの軌道は、その傾きが異常であることから、過去に別の衛星との相互作用があった可能性が示唆されています。フォボスの「祖先」にあたる、より大きな衛星が火星に落下し、その破片がリングを形成し、そこから新たな衛星が形成されるという「月-リングサイクル」の理論も提唱されています 37

フォボスの軌道が火星に接近し、最終的に衝突またはリング形成に至るという予測 15 は、衛星が静的な存在ではなく、惑星との潮汐相互作用によってダイナミックに進化する例を示しています。多くの衛星は惑星から徐々に遠ざかる傾向がありますが、フォボスは火星の自転よりも速く公転しているため、潮汐力が逆方向に働き、衛星を惑星へと引き寄せます。この現象は、太陽系内の他の衛星系ではあまり見られない特徴であり、衛星の軌道進化が惑星の歴史、特にリングシステムの形成にどのように影響を与えうるかを示す貴重な自然の実験室となります。これは、惑星科学における潮汐力の影響の重要性を強調します。

フォボスとダイモスの起源に関する捕獲小惑星説と巨大衝突破片説の対立 38 は、火星圏の形成史における根本的な未解明の課題です。JAXAのMMXミッションは、この謎を解き明かすことを主要な目的としています 39。衛星の起源は、惑星系の形成と進化のモデルに大きな制約を与えます。もし捕獲小惑星であれば、火星の初期の重力場や、小惑星帯との相互作用についての手がかりとなります。もし巨大衝突の破片であれば、火星自身の形成史における大規模なイベント(地球の月形成と同様)を示唆します。MMXがフォボスからサンプルを持ち帰ることで、その物質組成を地球の実験室で詳細に分析し、これらの仮説のどちらが正しいかを判断する決定的な証拠を得られる可能性があります。これは、太陽系全体の惑星形成の謎を解く鍵となりえます。


8. 火星探査の歴史と主要ミッション


火星探査の歴史は、人類がこの赤い惑星への理解を深めるための継続的な努力の軌跡を示しています。初期の探査はフライバイやオービターが中心でした。NASAのマリナー4号は1965年に火星の初の近接画像を送り返し、月のようなクレーターだらけの表面を明らかにし、多くの科学者に「死んだ惑星」という印象を与えました 1。その後、1971年にはNASAの

マリナー9号が火星の周回軌道に入った初の探査機となり、全球的な砂嵐の中で観測を開始し、砂嵐が収まった後に火山や峡谷などの詳細な地形を明らかにしました 45

着陸機とローバーの時代に入ると、より詳細な地表調査が可能になりました。NASAのバイキング1号・2号は1976年に火星に初めて軟着陸した探査機で、地表からの画像を送信し、土壌サンプルを採取して生命の兆候を探る生物実験を行いました。生命の明確な証拠は見つかりませんでしたが、火星の土壌に予期せぬ化学的活性があることを発見し、火星が火山性の土壌、薄く乾燥した二酸化炭素大気、そして古代の河川跡や大規模な洪水の強力な証拠を持つ寒冷な惑星であることを特徴づけました 1

1997年のNASAのマーズ・パスファインダーは、エアバッグによる革新的な着陸方法を実証し、初の車輪型ローバー「ソジャーナー」を火星に展開しました 12。ソジャーナーは数百平方メートルを探査し、岩石や土壌の組成を分析しました。このミッションは、火星がかつて温暖で湿潤な環境であった可能性を示唆するデータを提供し、将来のローバーミッションの基礎技術を確立しました 47

2004年に着陸した双子のローバー、NASAのスピリット・オポチュニティは、当初の設計寿命をはるかに超えて活動し、火星に液体の水がかつて存在した明確な証拠(水中で形成される鉱物、粘土鉱物、熱水泉の痕跡など)を広範囲にわたって発見しました 1。2011年に着陸したNASAの

キュリオシティは、ゲール・クレーターで過去に微生物生命を支えうる環境が存在した化学的・鉱物学的証拠(古代の淡水湖、有機炭素化合物、生命の構成要素)を発見しました 1。また、火星の放射線環境を測定し、将来の有人探査に向けた重要なデータを提供しています 26

最新のローバーであるNASAのパーサヴィアランスは2020年にイエゼロ・クレーターを探査し、火星の火山史、居住可能性、水の役割に関する発見をしました 28。また、将来のサンプルリターンミッションのために、多様な岩石とレゴリスのサンプルを収集・貯蔵しています 28。MOXIE実験では、火星大気の二酸化炭素から酸素を生成することに成功し、有人探査に向けた現地資源利用(ISRU)の可能性を示しました 28

周回機による広範な観測も火星理解に大きく貢献しています。NASAのマーズ・オデッセイ(2001年)は火星の軌道を最も長く周回している探査機で、火星の全球観測を行い、地下の氷の発見に貢献しました 1。NASAの

マーズ・リコネスサンス・オービター(MRO)(2005年)は高解像度画像で火星の地表や気象を詳細に観測し、水の歴史や季節変化を研究しています 12。ESAの

マーズ・エクスプレス(2003年)は火星の水の探索に貢献し、多くの流水地形や含水粘土鉱物を発見しました。また、MARSISレーダーを用いて地下構造を調査し、メデューサ・フォッサ地形の巨大地下氷を発見しました 3。NASAの

MAVEN(2013年)は火星大気の宇宙への流出過程を主に上層大気の観測を通じて探っています 13。ESAの

ExoMars TGO(2018年)は生命や地質学的活動の痕跡となる気体の探索や、火星大気の鉛直高度分布を調べています 16

火星探査は、初期の偵察(フライバイ)から、詳細な地図作成(オービター)、地表での直接的な調査(着陸機)、移動による広範囲探査(ローバー)、そして未来のサンプルリターンや有人探査に向けた技術実証へと、段階的に進化してきました。各ミッションは先行ミッションの発見を基盤とし、次世代ミッションの目標を設定する相互補完的な関係にあります。マリナー4号の「死んだ惑星」という初期の印象 12 から、バイキングによる生命探査の試み 46、パスファインダーの技術革新 47、そしてスピリット・オポチュニティやキュリオシティ、パーサヴィアランスによる水の歴史と居住可能性の深掘り 24 へと、探査の焦点はより複雑で深遠な科学的疑問へと移行してきました。オービターが広域的な観測で着陸地点を選定し 47、着陸機やローバーがその場で詳細な分析を行うという戦略は、限られた資源の中で最大の科学的成果を得るための効率的なアプローチであり、宇宙探査におけるシステム思考の好例です。

エアバッグ着陸(パスファインダー 47)や、MOXIEによる酸素生成(パーサヴィアランス 28)のような技術的ブレークスルーは、単にミッションの成功だけでなく、その後の科学的発見の範囲と深さを劇的に拡大させてきました。エアバッグ着陸は、従来の着陸技術よりも低コストで広範囲への着陸を可能にし、スピリット・オポチュニティのような複数のローバーの展開を促進しました。これにより、異なる地質学的環境での同時探査が可能となり、火星の水の歴史に関する包括的な理解が深まりました。MOXIEの成功は、将来の有人ミッションにおける現地資源利用(ISRU)の実現可能性を飛躍的に高め、火星での自給自足の可能性を開き、長期滞在やテラフォーミングの議論を具体化させるものです。技術革新が科学のフロンティアを押し広げる典型的な例と言えます。


主要火星探査ミッションと主な発見


ミッション名

運用機関

打ち上げ/着陸年

ミッションタイプ

主な発見/貢献

マリナー4号

NASA

1964

フライバイ

火星表面のクレーターの初画像送信 1

バイキング1号・2号

NASA

1975

オービター・着陸機

火星地表からの初画像、生命探査実験、古代の河川跡の証拠 1

マーズ・パスファインダー

NASA

1996

着陸機・ローバー

エアバッグ着陸実証、初のローバー(ソジャーナー)展開、過去の温暖湿潤環境の示唆 12

スピリット・オポチュニティ

NASA

2003

ローバー

水中で形成された鉱物の発見(ヘマタイト「ブルーベリー」など)、広範囲な水の歴史の証拠 1

マーズ・リコネスサンス・オービター (MRO)

NASA

2005

オービター

高解像度画像、水の歴史、気象観測、地下氷の存在示唆 12

マーズ・エクスプレス

ESA

2003

オービター

流水地形、含水粘土鉱物、メデューサ・フォッサ地形の巨大地下氷発見 9

MAVEN

NASA

2013

オービター

火星大気の宇宙への流出過程の研究 13

キュリオシティ

NASA

2011

ローバー

過去の居住可能環境の証拠(古代湖、炭素循環)、有機物発見 1

パーサヴィアランス

NASA

2020

ローバー・ヘリコプター

火山史、居住可能性、MOXIEによる酸素生成、サンプル採取 28

MMX

JAXA

2026 (計画)

サンプルリターン

火星衛星の起源解明、火星物質のサンプルリターン 39

この表は、火星探査の歴史を時系列で整理し、各ミッションが火星の理解にどのように貢献してきたかを簡潔に示します。これにより、火星に関する現在の知識が、長年にわたる国際的な努力と技術革新の積み重ねによって築かれてきたことが明確になり、読者は個々の発見が全体のパズルの中でどのような位置づけにあるかを理解できます。


9. 火星探査の未来:有人ミッションと移住計画


火星探査の未来は、有人ミッションと最終的な移住計画へと向かっています。NASAは2030年代または2040年代に有人火星ミッションを計画しており、SpaceXやBlue Originなどの民間企業も火星進出計画を加速させています 10。しかし、火星への片道6〜9ヶ月にも及ぶ長期の宇宙飛行は、宇宙飛行士に宇宙放射線、微小重力、隔離などの深刻なハザードをもたらします 49。これらのリスクを軽減するため、より効果的な遮蔽技術、宇宙船設計の改善、高度な生命維持システム、乗組員訓練プログラムなどが研究されています 49。火星に到着後も、宇宙飛行士は食料、水、エネルギーの確実な供給源を確立する必要があります 49。また、火星の土壌には過塩素酸塩などの有毒物質が含まれている可能性があり、長期滞在の大きな課題となります 4。地球との距離が大きいため、通信遅延(最大42分)が発生し、リアルタイムでの指示や緊急対応が困難になります。リレー衛星や高度なアンテナシステムの開発が進められています 4

火星での持続可能な人類の存在を確立するためには、現地資源利用(In-Situ Resource Utilization, ISRU)が不可欠です 4。水氷を水素と酸素に分解してロケット燃料や呼吸用酸素を生成すること 29、閉鎖循環型生命維持システムで資源をリサイクルすること、3Dプリンティングで現地材料から居住施設を建設することなどが検討されています 49。パーサヴィアランス・ローバーのMOXIE実験は、火星大気の二酸化炭素から酸素を生成することに成功し、ISRUの実現可能性を実証しました 28。メデューサ・フォッサ地形の巨大地下水資源の発見は、赤道付近でのISRUの可能性を飛躍的に高め、将来の有人探査の戦略に大きな影響を与えるとされています 22

JAXA主導のMMXミッションは、2026年打ち上げ予定で、火星の2つの衛星(フォボスとダイモス)の詳細な観測と、フォボスからのサンプルリターンを目指しています 39。科学的目標は、火星衛星の起源(捕獲小惑星か巨大衝突破片か)の解明、火星と地球型惑星の形成プロセスの理解、火星圏の進化史の解明です 39。技術的目標としては、火星圏への往復航行、衛星表面への着陸と高度なサンプル採取技術の開発が含まれます 39。MMXは、フォボスが火星の有人基地の候補地となりうる「天然の宇宙ステーション」として、その表面地形や地質、環境の詳細な観測も行います 40

NASAとESAが共同で計画する火星サンプルリターン(MSR)は、パーサヴィアランス・ローバーが収集した火星のサンプルを地球に持ち帰ることを目指す、最も野心的な複数ミッションキャンペーンです 31。地球の実験室でサンプルを分析することで、火星の歴史、惑星進化、生命存在の可能性について根本的な疑問に答えることができます。これは、現場の探査機では不可能な詳細な分析を可能にします 50。MSRは、火星のダストが人体に及ぼすリスクの評価や、惑星保護(地球への火星微生物の持ち込み防止)に関する問題に対処することで、将来の有人ミッションのリスクを低減する上でも重要です 50。しかし、MSR計画は予算上の課題に直面しており、米国では計画が中止される可能性も議論されています 50。中国は2031年までのサンプルリターン計画を発表しており、MSRの実現は国際的な宇宙競争の側面も持ちます 50

テラフォーミングは、火星の環境を人工的に地球に近づけ、人類が居住できるようにする概念です 10。大気圧の上昇、気温の上昇、水の確保などが主要な課題となります 22。火星の巨大な水資源の発見は、テラフォーミングの可能性に興味深い示唆を与えます。水は生命維持だけでなく、大気形成や気候安定化にも役立つ可能性があります 22。しかし、火星の植民地化には、技術的・財政的課題だけでなく、倫理的な考慮事項も伴います 10

有人火星探査の実現には、火星の環境(特に放射線や土壌の毒性)に関する詳細な知識と、現地資源利用技術の確立が不可欠です。火星サンプルリターン(MSR)は、これらの相互に関連する課題を、有人ミッションに先立って解決するための最も現実的な手段であると位置づけられています 50。人間を火星に送る前に、その環境が人体に与える影響を正確に評価し、生命維持に必要な資源を現地で調達できるかを確認することは、ミッションの安全性と持続可能性を確保する上で極めて重要です。MSRは、地球の高度な分析施設で火星のサンプルを詳細に調べることで、放射線による影響や土壌の毒性に関する未知のリスクを特定し、対策を講じるための決定的な情報を提供します。また、ISRU技術の検証も、サンプルリターンミッションを通じて進められることで、有人探査の実現可能性を飛躍的に高めることができます。これは、科学的探求と工学的実証が密接に連携する、宇宙開発の戦略的アプローチを示しています。

MMXミッションが火星衛星フォボスを「天然の宇宙ステーション」として詳細に調査する目的 40 は、将来の有人火星探査における「ブリッジヘッド(橋頭堡)」としてのフォボスの可能性を探るものです。フォボスは火星に近く、重力が非常に小さいため、火星表面への往復や、より遠い太陽系へのミッションの中継地点として理想的です。MMXがフォボスの地形、地質、環境を詳細にマッピングすることで、将来の有人ミッションにおける補給拠点、燃料製造拠点、あるいは放射線からの避難場所としての適性を評価できます。これは、単なる科学探査を超え、人類の太陽系拡大戦略における重要なステップとして、MMXが有人探査計画と密接に連携していることを示しています。

火星探査、特にサンプルリターンや有人ミッションの領域では、NASA、ESA、JAXA、そして中国などの宇宙機関の間で、協力と競争が複雑に絡み合っています 10。MSR計画の予算問題 50 は、国際的なリーダーシップと技術的優位性を巡る競争の側面を浮き彫りにします。一方で、NASAとESAのMSRにおける協力 31 や、JAXAのMMXにおける国際協力 41 は、単一の国では達成が困難な大規模で複雑なミッションを可能にするために不可欠です。この多国間連携は、技術、資金、専門知識を共有することで、探査のリスクを分散し、科学的成果を最大化する利点があります。これは、宇宙探査が地球規模の課題であり、国際的な協調が不可欠であることを示しています。


10. 文化における火星


火星は、その特徴的な赤い外観から、古くから人類の意識の中で特別な位置を占めてきました 51。古代ローマでは戦いの神マルスに、ギリシャではアレスに結びつけられました 1

文学においては、19世紀後半には、月には生命がないことが明らかになり、火星が最も人気のある地球外の場所となりました 52。ジョヴァンニ・スキアパレッリによる「カナーリ」(運河)の観測報告と、パーシヴァル・ローウェルによる「人工運河」説は、火星に古代の高度な文明が存在するという誤解を広め、多くのSF作品に影響を与えました 52。H.G.ウェルズの『宇宙戦争』(1898年)は、火星人が地球を侵略するという描写で、未知への恐怖と魅了を表現しました 44。レイ・ブラッドベリの『火星年代記』(1950年)は、地球を逃れた人類が火星を植民地化する物語を描き、異星での新たな始まりの魅力と危険性を強調しました 44。エドガー・ライス・バローズの『火星シリーズ』(ジョン・カーター・オブ・マーズ)は、退廃的な火星文明と、赤、緑、黄、黒の肌を持つ火星人を描きました 44。キム・スタンリー・ロビンソンの『火星三部作』は、火星のテラフォーミングを主要なテーマとしています 52

映画やテレビでは、『トータル・リコール』(1990年)で火星が資源採掘の場として描かれ、記憶操作という哲学的問いの背景となりました 44。『オデッセイ』(2015年)は、アンディ・ウィアーの原作に基づき、火星の過酷な環境と人類の生存への適応力をより現実的に描きました 51。『マーズ・アタック!』(1996年)のような作品は、50年代のSF映画へのオマージュとして、コミカルな火星人侵略を描きました 44。ビデオゲームでは、『Doom』シリーズで火星が地獄へのポータルとして描かれ、『Surviving Mars』では火星の植民地建設と管理に挑戦するシミュレーションゲームとして、火星移住の複雑さをゲーマーに提示しました 51

火星の表象は、危険と機会の両方の場所としての集合的な認識を形成してきました。初期の描写は空想的で不吉な傾向がありましたが、最近の描写はより現実的で、探査と生存の精神に焦点を当てています 51。SFはしばしば科学者や探査者のインスピレーションとなってきました。火星が物語の中に常に存在することで、宇宙探査の目標としての位置づけが強化されています 51。科学的理解の進展と文化的な描写は相互に影響し合い、火星の物語は進化し続けています。火星は、未知、人類探査のフロンティア、そして潜在的な未来の故郷の象徴として、私たちの文化の中で特別な場所を占め続けています 51

火星の描写が、当初の「運河」や「侵略者」といった空想的なイメージ 52 から、『オデッセイ』のようなより現実的な生存物語 51 へと変化してきたことは、科学的探査による火星の理解の深化が、大衆文化の想像力を直接的に形成してきたことを示しています。19世紀後半のスキアパレッリとローウェルの観測は、火星に生命が存在するという強い信念を生み出し、それが『宇宙戦争』のような作品に影響を与えました。しかし、マリナー4号 12 やバイキング 46 などの探査機が火星の荒涼とした現実を明らかにするにつれて、大衆文化の描写もより科学的に根拠のあるものへとシフトしていきました。この相互作用は、科学が文化に影響を与え、また文化が科学への関心と資金提供を促すという、宇宙探査における重要なフィードバックループを形成しています。


11. 結論:知識のフロンティアとしての火星


火星は、太陽系で最も探査された天体の一つであり、その物理的特性、大気、地質、水の歴史、生命の可能性について、我々の知識は飛躍的に向上しました 1。過去に液体の水が存在した証拠は、火星がかつて生命に適した環境であった可能性を強く示唆しており、現在の探査は地下の水の探索と、過去の微生物生命の痕跡の発見に焦点を当てています 14。JAXAのMMXやNASAとESAが共同で進めるMSRのような将来のミッションは、火星の起源、進化、そして生命の可能性に関する根本的な疑問に答えるための重要なステップとなります 31

火星の探査は、地球外生命の存在という人類最大の問いの一つに答える可能性を秘めています。生命が見つかろうと見つからなかろうと、その結果は私たちの宇宙における位置づけと、生命の普遍性に関する理解に深い影響を与えるでしょう 14。火星の過酷な環境での生存と資源利用の課題は、人類の技術革新を推進し、地球外での持続可能な居住の可能性を探る上で不可欠な経験を提供します 4。火星は、科学的探求の対象であるだけでなく、人類の想像力の源泉であり続けています。その探査は、私たち自身の起源、地球の独自性、そして宇宙における人類の未来について深く考える機会を与えてくれます。火星は、常に知識のフロンティアであり、人類の探求心を刺激し続けるでしょう。

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引用文献

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