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民主主義と哲学

民主主義をめぐる哲学的探求:正当化、批判、そして変容の系譜 第1部 古典的基礎:理想主義と懐疑主義 民主主義をめぐる哲学的対話の起源は、その制度が誕生した古代アテナイにまで遡る。しかし、興味深いことに、その黎明期における最も影響力のある思想家たちは、民主主義の最も辛辣な批判者であった。この時代の議論の核心には、民衆支配という理想と、衆愚による非合理性や徳の堕落という現実との間の緊張関係が存在した。 第1章 アテナイの夜明けとその影 デモクラティアの出現 民主主義の語源であるギリシャ語の「デモクラティア(demokratia)」は、「人民(demos)」による「支配(kratos)」を意味する 1 。この政治形態は、紀元前5世紀のアテナイにおいて、人類史上類を見ない政治的実験として誕生した 2 。その急進性は、市民が直接政治的意思決定に参加するという点にあった 1 。 直接参加の理想 古代民主政の本質は、近代の代議制とは異なり、市民が直接「統治し、統治される」という循環的な参加にあった 3 。市民たちはアゴラ(広場)に集い、都市の政策を議論し、投票によって決定を下した。ペリクレスの「葬送演説」に理想化されたように、この制度はアテナイ市民の誇りの源泉であった 2 。この直接民主政は、スパルタの寡頭政など、ギリシャ世界に同時に存在した他の多様な政治形態と鮮やかな対照をなしていた 2 。 哲学的な問いの発生 ギリシャ世界における多様な政体の並立と競争は、政治思想が発展するための「肥沃な土壌」となった 2 。いかにして安定的で正義にかなった国家を築くかという問いが中心的な課題となったが、アテナイが生んだ最も著名な哲学者たちは、自らが目の当たりにした民主政というモデルに対して、深い懐疑の念を抱いて回答した。ただし、現存する歴史的記録の多くが反民主主義的な立場から書かれたものであるため、我々が抱くアテナイ民主政のイメージがそれによって大きく形成されている点には留意が必要である 6 。 第2章 プラトンによる民主制の告発 背景:ソクラテスの死 プラトンのアテナイ民主政に対する深い失望は、彼の師ソクラテスが民主的な民衆裁判によって死刑判決を受けたことで決定的となった。この出来事は、彼を民衆の意見ではなく理性によって統治される理想国家(カリポリス)の探求へと駆り立てた 7 。彼の主著『...